小林秀雄「モオツァルト」備忘録

小林秀雄の「モオツァルト」を読みました。凄い。以下備忘録。

 

「音を正当に語るものは音しかないという真理はもはや単純すぎて(実は深すぎるのだが)人々を立ち止まらせる力がない。音楽さえもう沈黙を表現するのに失敗している今日、他の芸術が何を言おうか」

「抵抗物のないところに創造という行為はない。これが、芸術に於ける形式の必然性でもある」

「無用な装飾を棄て、重い衣装を脱いだところで、裸になれるとは限らない。何も彼も余り沢山なものを持ち過ぎたと気が付く人も、はじめから持っていなかったものには気が付かないかも知れない」

「世間で成功するとは、世間に成功させて貰う事にほかならなかったから」

「凡そ、行為は、無償であればあるほど美しく、無用であればあるほど真実であるというパラドックス

「モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる。」

「モオツァルトの器楽主題は、ハイドンより短い。ベエトオヴェンは短い主題を好んで使ったが、モオツァルトに比べれば余程長いのである。言葉を代えれば、モオツァルトに比べて、まだまだメロディィを頼りにして書いているとも言えるのである」

「彼は、大自然の広大な雑音のなかから、何とも言えぬ嫋やかな素速い手付きで、最小の楽音を拾う。彼は何もわざわざ主題を短くしたわけではない。自然は長い主題を提供することが稀だからに過ぎない。」

「狭めた事は深めたことではなかったか。いや、源泉は、下流の様に拡がっていないのは当然ではあるまいか」

「旋律の形もなさぬ人間の日常の肉声の持つ極めて複雑なニュアンスが、しっかりと歌の旋律のうちに織り込まれ、旋律は。これから離れて浮足立つ事は出来ない」

「大切なのは目的地ではない。現に歩いているその歩き方である」

「モオツァルトは、目的地なぞ定めない。歩き方が目的地を作り出した」