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黒澤明「白痴」

黒澤明の「白痴」を観ました

 

原作はご存知ドストエフスキーの傑作小説。
観る前から気になってたのはあの長い小説を1本の映画に纏めきれるのかということ。懸念してたとおり前半は設定やストーリーが説明口調で慌ただしいです。これ原作読んでない人はわかるのかな?という感じ。


しかし映像は流石世界のクロサワの全盛期。素晴らしいです。舞台が冬の札幌で、1950年頃の今とは違うエキゾチックな景色を堪能できるのが愉しいです。半ばあたりでの陸橋の下をSLが白煙をあげながら通っていきその煙の中から三船敏郎が現れるシーンなんかゾクゾクします。


素晴らしい点は多々あるんですが気になるのはどうにも映画が駆け足な点。観た後で調べてみたらその謎が解けました。
この作品。前後編2部作で作られる予定だったそうなんですが、それが映画会社の意向でカットされ、当初4時間32分あった映画が2時間46分になったそう。
なんと2時間近いカットです。そりゃせわしなく感じるよなあ。
しかもそのカットされた映像は現存せず、この黒澤明の本位ではない短縮版しか無いそう。そんな馬鹿な。有り得ない。。。黒澤作品としては当時から評価の低い作品ですが、カットされなければ歴史に残る傑作だったかも。


その幻の傑作ですが、役者陣がまた素晴らしいです。珍しく(少し)汚れ役の原節子公爵家の出という家柄の良さがよくわかる気高い美しさの久我美子。完全に主役の「白痴」が憑依している森雅之。逆に役柄を強引に自分に引き寄せてる三船敏郎
そのなかでも個人的には森雅之が印象に残りました。有島武郎の息子ですよ。芥川龍之介の息子は芥川比呂志だし、文豪の子は名優になるという何かがあるんでしょうか(^^)?


というわけで、完成度は低いかもしれませんが、個人的には黒澤明作品の中でもとても心に残る映画でした。